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部屋着のロングスカートとタイツにショール巻いて友人が遣って来た
「湾岸走ってたらここまで来ちゃった」と、ドアを開けるとクスッと笑って入ってきた
「どうしたの部屋着のままで…あれ…ルームシューズじゃないの…」
玄関に白い皮の室内履きが丸まって脱ぎ捨てられてあった
あきらかに飛び出してそのまま車を運転してやって来たそんな感じだった
「Kがさ…憎たらしいから出てきちゃった…」一人息子のk君と喧嘩したらしい
海を染める夕日がきれいで彼女がベランダに出たので珈琲を渡しながら私も並んで夕日を浴びた
彼女はk君がまだ小学生の頃
ご主人に「好きな人が出来た別れて欲しい」と、言われて離婚をした
「せめて隠してくれればいいのに堂々と言われて何も言えなかった…」と揉める事無く別れた
ご主人が家を出て行き、その家を貰ってそれが唯一の財産だった
彼女はめげることは無かった「さあ、頑張らなくっちゃ k がまだ小さいからね」と前を向いていた
彼女は某アトリエのお針子さんの責任者として黙々と働いてきた
それが彼女のプライドだったのかも知れない
最近、結婚をしてマンションに住んでいるk君が、彼女の家を建て替えて一緒に住む事を提案してきたらしい
同居を嫌っていたお嫁さんが気持ちを変えたらしい…
「ㇷ~ン…良い事なの?悪い事なの?子供がいないので解らない」と言うと
「それはね…いろいろ考えようだと思うけど…この話には裏事情があることが分かったのよ」
サスペンスの謎解きのようにちょっと言葉を置いた
「今日ね自分たちが考えるプランを持ってきたのよkが言うのにはね…母さんは一番いい部屋に住んで欲しい年を取って行くから一階が好いだろう日当たりのいい部屋がね…と言うのよ」
「好いじゃない…これから階段登るの大変だし…」と私が言うと彼女は首を横に振って
「二階のね、間取りを見たらk達の夫婦の寝室と、子供たちの部屋と…もう一つ和室があるのよ、しかもトイレが付いてるのよ、何この部屋って聞いたら客間だっていうのよ、誰が泊まるの今時…って言ったらね
kが押し黙ってね…「母さん、向うの父さんと母さんを呼ぼうと思うんだよ年もとってきたし、貸家だから家賃も馬鹿にならないしって言うのよ…」
私も“エーっ”て思わず声を上げた「でしょ?家を建て替えようと言うのはこれが始まりなのよ…しかも自分たちの部屋の隣よ…私はみんなと離れたリビングの隣よ・・・何も言わず私そのまま家を出てきたの…」
淡々と話していた彼女が急に押し黙った
あれ?と思って振り返ると、大粒の涙が頬を一筋流れ落ちた
ご主人と別れる時も人の前で取り乱した事が無かった
k君を守るため結婚もしないで働き通した…
夫にも息子にも誰にも労われる事の無い孤独感を突然感じたのかも知れない
彼女の涙を始めて見た…
強さが故に彼女は誰にも守られることが無かったんだね…きっと
強いから縁の下の力持ちのような損な役回りが多かった…
私は気の弱さから利用される口惜しさを味わったけど、
強いから人から労わられない…そんな事もあるんだなあ
「大変だったね…」と言うと止まることなく涙が流れ落ち…そして「うん…」と頷いた


                             007.gif025.gifどうするんだろう…いろいろあるなあ      
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by time2022 | 2015-10-26 08:51 | 日記

2017年 11年目の海辺暮らしとなりました       黄昏て70才 撮りためた写真でその時思った事、今思う事等を、書き綴っていきますブログ内の写真イラストの使用を禁じます


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