老女優

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新劇の老女優とホテルで会った
それは鄙びた東京近郊のホテルで宿泊の手続きでクロークに夫が行ってる時
ロビーのソファーに腰かけ手持無沙汰に周りを見渡した
名も無い安普請のホテルではあったがところどころが凝っていて、吹き抜けた天井がアーチ形になっていたり、階段の手すりに飾り彫りが施されていたりなかなか趣のある建物だった
が、木の階段の真ん中が擦り減り明らかに端の木目と色が違いかなり建物の古さは感じられた
そんな時に二人の老女が音も無く入口を入ってきた
地味な佇まいではあったが指の先まで洗練されたその趣に目が囚われてしまった
だいぶご高齢であったが背筋をスッと伸ばし、ちょうどチェックインの時間で何人かの客が手続きをしているその後ろにひっそりと寄り添うように立っていた
戻ってきた夫に「あの人たち…」と言いかけたが夫がどんどん歩いて行ってしまうので言いそびれたまま部屋に向かってしまった

2度目に会ったのはその日の夕食の時で、そのホテルの食堂で何組かがそろって食事をしているところへ遅れて二人が入ってきた
髪にターバンを巻いてロングのスカートを履いて装いを新たにしていた
用意されていた食事は明らかに皆と違っていて、フルーツと洋皿に卵料理が載っていて席に着くとナフキンを膝に置いて静かに食べ始めた
「ねえ、あの人たち何か違う…」と夫に囁くと興味無さそうに一度見てから手を止めてもう一度見ていた
「ね?何かさ…気取ってるわね」私は自分の興味と真逆のことを言うと
「う、うん・・・新劇の女優だよ…××座の幹部だよ」と言った
そお言われて見直してみると明らかに一人の人の顔に見覚えがあった
サスペンスドラマなどにチョイ役で犯人を目撃した老女や、下町の口うるさい噂好きの年寄りなんかを演じていた
夫は以前そこの劇団の仕事をしたことがあり、挨拶しようか迷っていたが「ま!いいや…」とそそくさと立って挨拶をしなかった
「あんなチョイ役なのに幹部なの?」と言うと「舞台は違うんだよ」と言った
あんなに大衆的な役をやる人が…あまりにも印象が違うので吃驚したのが本音で
その物静かな知的な老女に魅せられてしまった

そして翌日、チェックアウトする時に、又会った
車を呼んでいるらしく、入り口のドアの所に立っていて顔を合わさずに出るのはちょっと難しく
「ちょっと待ってて…」と言うと夫は挨拶に行った
初めチョッと怪訝な顔をしていたが急に艶やかな表情になり、握手をすると背中に手を回し久しぶりの愛人にでもあったような甘い表情になり燥ぐように夫に話しかけている
車が来て乗り込むまで夫の手を握り名残惜しそうに去って行った
「あんなに歓待されるほどの知り合いじゃないでしょ?」と私が言うと
「うん、ちょっと挨拶で会っただけだけど…劇団の人も大変なんだろ、チケットのノルマ何か有るし…」
「頼まれたの?」と聞くと「うん」だって…て事は一枚じゃないだろうね…(¯―¯٥)
これからチケットの売り先にしっかりインプットされたね…きっと…´◠`

しかし…女優は凄いな~三つの顔を見た


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by time2022 | 2015-06-10 08:41 | 日記

2017年 11年目の海辺暮らしとなりました       黄昏て70才 撮りためた写真でその時思った事、今思う事等を、書き綴っていきますブログ内の写真イラストの使用を禁じます

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