懐かしい匂い

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匂いは、目で見る記憶よりも喚起する力がとても強く嗅覚への刺激は記憶や感情を強く呼び起こす作用があるらしい
今日包まれる様に思い出したある光景があった

マンションのロビーに静かな幻想的な海の絵が飾られたので暫く見ていたら、その絵の作者がたまたまいらしていろいろ説明をしてくれた
マンションの住人の方で仕事をリタイアしてから悠々自適、部屋をアトリエにして大好きな海の絵を描いているらしい
管理人さんが「今、他の絵も見せて頂くんでご一緒に…」と誘ってくれたので、一緒に伺った
扉を開けて入った時から、あら~…何か…妙に懐かしい…海に向いたベランダの戸が大きく開け放たれ、イーゼルの上に描きかけのキャンバスが載っていた
横に丸テーブルが置いてあり油彩筆が並べられ、油彩絵具と描画油の揮発性の匂いがぷーんと匂った…
あゝ…この感じ…或る懐かしい光景を思い出した

戦後間もないあの頃…
まだまだ既製服が粗雑で、余所行きや晴れ着などは生地から仕立ててもらう事の方が多かった
その需要を満たすように、近所を見回せば出入り口に「洋服仕立て承ります」の紙が貼り付けてある家が結構あった
坂の上の白い家に母はいつも洋服仕立て頼んでいた
私の余所行きもここで殆ど作ってもらった
その家は白いペンキの塗られた洋風の家で入口に申し訳程度に「洋服仕立て致します」と張り紙が貼ってあり、その横には「絵画教室」と立派な看板が立ち、画家であるご主人の絵画教室の入り口になっていた
入口を入ると油絵の具の独特の匂いがぷ~んとしていて、板張りの床のアトリエにはいつも、5,6人の子供たちが絵を描いていた
母は私の手を引いて、子供たちの邪魔にならないようにアトリエの端を足早に突っ切ると奥の和室の部屋に入った
母が仮縫いなどしてもらっている間、自分よりかははるか年上の子供たちが果物など描くのをじっと見ていた
「絵を習いにいらっしゃい」と奥さんに誘われたりしたけれど
母から離れてどこも行けない子だったので実現はしなかったが
木造の日本家屋に住んでいた私は、この床張りで天井の高いステンドグラスの明かり取りの付いたこの洋風の家が魅惑的で、
デッサン用の石膏や、果物の置かれた猫足のテーブルなどが並ぶその光景はとても印象的だった
今もアトリエ風の家が好きなのはその時の記憶が影響してると思えるし…
特に油絵の具等の揮発性の匂いは強烈に脳に沁みついていて…
今日、突然大脳の海馬が刺激されたと見え瞬時に懐かしく、母に寄りかかりながら眺めたあのアトリエが懐かしく思い出された




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by time2022 | 2015-03-25 08:20 | 日記

2017年 11年目の海辺暮らしとなりました       黄昏て70才 撮りためた写真でその時思った事、今思う事等を、書き綴っていきますブログ内の写真イラストの使用を禁じます

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