氷点

久しぶりに友人A子の家に行って来た…
今は引き籠り状態の私に、やいのやいのとA子に用事で呼び出されてやっとの気持ちで行く事になったのだが…
会うのは実に久しぶりだったし、家に行ったのは何十年ぶりだったかもしれない
夜、食事の後 夫の話を嫌がる私に…それじゃあ私の話しようかなあとふざける様に
「私ね、母親と血が繋がってなかったのよ」と突然話し出した
実に、50年近くの知り合いなのに初めて聞く話だった
「そうなの…」私も思いもかけない成り行きに平然を装って何でも無いように聞いた
「父のね…浮気で出来た子らしいわ…子供が居なかったので、こっちで実子として育てられたらしい…」
他人事のように話していく彼女
「あの頃知ってたの?」と聞くと「ううん…お母さんに死ぬ時呼び寄せられて聞かされたの」と言った
私はA子は多分あの頃から感じていたんだなと思った
どこかよそよそしい感じが思い出された
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若い頃年中この家に泊まりに来ていた
A子の部屋は奥まった北向きの部屋で家の中で何か距離感が有って、家族と離れた感じが干渉が無く居心地がよかった
A子と寝転がって話してると母上が必ず顔を覘かせた
戸を開けるとぷ~んとお酒の匂いがした
畏まる私に、「Aちゃんの事お願いね、ずっとお友達でいてね」と言い
ある時は手まで握り「Aちゃんの事お願い…」と哀願するように頼んだ
ちょっと間をおいて友人が「もう出て行って…お酒臭いし…ひつっこい…」と追い出した
裕福なお家の奥様なのにどこか違和感のある感じがした

一度も覘きに来ないと、気になって「お母さんは?」と聞くと「麻雀…近所の不良年寄りが集まって朝までやってるのよ」と言った
母親の話をするとき何処か突き放したような言い方をした
父上はある会社の役員を退いて久しく8時には寝てしまうらしかった かなりご高齢であった
それから何年かしてお父上が往き、少しして母上も往った…
でも彼女はその話を誰にもしなかった
「聞いた時ショックだったの?」と聞くと「全然…」と表情も変えなかった
「産みのお母さんは…」「知らない…」と彼女は言った
私と父の葛藤は親しい友人達は知っていた
私が悉く父を嫌っていたので、皆見聞きして知っていた
でも彼女の心深くに抱えていたこの事実は誰も知らなかった
夫の愛人が生んだA子を育て上げた長い年月を思うとちょっとしどけないあのお母さんの心情は如何なるものだったんだろうか思った
三浦綾子の「氷点」と言う小説の
誰の心にも決して解けない氷点があると言う言葉が浮かんだ
みんな人知れず何かを背負ってるのが人生なんだなあ…


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by time2022 | 2014-03-17 06:30 | 日記

2017年 11年目の海辺暮らしとなりました       黄昏て70才 撮りためた写真でその時思った事、今思う事等を、書き綴っていきますブログ内の写真イラストの使用を禁じます


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