仲良し

b0252727_20581241.jpg

小学校の低学年の頃…K子ちゃんと言う仲良しのお友達がいた
その頃はまだ小さくて、何かがきっかけで一日仲が良くても
翌日になると同じ色の洋服を着た子と手をつないで遊んでたりする気まぐれさだったが
私達はいつも仲良しだった
私は結構気性の強い子に引っ張りまわされることが多かったので
大人しくて優しいK子ちゃんが大好きだった
K子ちゃんのお家は二間の部屋と土間のある家でそこに親子5人で住んでいた
天井は組んだ柱がそのまま剥き出しになっていた
小父さんは何の仕事だったのか街中をよくリヤカーを引いていた
たまにお酒屋さんの前でリヤカーに足をかけてコップ酒を昼間から飲んでいた
K子ちゃんはその姿を見つけるとスカートの裾をぎゅっと握ってジッと見つめていた
その頃はまだまだ復興の途中だったが、土間があるような家はそろそろ珍しかった
活発な子は缶蹴りをしたり縄跳びをしたり遊んでいたが
私達はクローバーを捜したり、お花で色を出してジュース屋さんごっこしたりして遊んでいた
ある日、K子ちゃんの小母さんが
「お酒屋さんで、お酒もらってきて…これに何合って書いてもらってね」
瓶と何枚もの紙を纏め黒紐で括った草紙のようなものをK子ちゃんに持たせた
「K子はすぐ帰って来るからここで待っててね」と言われたが
私も追っかけて走って、K子ちゃんと一緒にお酒屋さんまで行った
お酒屋さんの小母さんが奥に座っていて、私達が店先に立っていると徐に出てきて
「お母ちゃんに行けって言われたの?…お酒は渡せないのよ、いくら子供よこしても…駄目よ
前のも、前のも、前のもお金もらってないの…お金払ったらいつでも買えるからねってお母ちゃんに言って…」
と言って奥に引っ込んでしまった
でも、K子ちゃんはその幼い眼差しで奥を見つめたままそこを動かなかったので、
私も一緒に奥を見つめたまま並んで立っていた
だいぶ時間が経って、お客さんが来て「くださいな~」と声をかけたので小母さんが出てきた
愛想の良い顔でお客さんと通りいっ辺の挨拶など交わしながら、ちらりと私達を見た
お客さんが帰ると、しばらく私達を見ていたが
無言で瓶を取ると、一合枡で2回お酒を入れてくれてK子ちゃんに渡した
K子ちゃんは嬉しそうに買い物袋に入れると歩き出した
「私も持つ…」って手を出したが、「ううん…」と首振って大事そうに持って小走りに家に帰った
小母さんは「くれた…そう…くれたの」ってホッとしたように私たちの頭を撫でた
そして、お駄賃に梅干を一つずつ手のひらに乗せてくれた

ある日、学校が終わって家に帰り、いつも通りK子ちゃんの家に走って遊びに行くと…
荷物を積んだリヤカーが止まっていた
何かいつもと違うと思いながら「K子ちゃん、遊びましょ…」と声をかけると
玄関口で荷物を纏めていた小母さんが「ちょっと、出掛けるから…又遊んでね…」と言った
私は頷いて、後ずさりしながら帰りかけると、
横の路地に面した窓からK子ちゃんが顔を出した
小母さんを気にして中を伺うように
「誰にも言っちゃいけないんだけど、おばあちゃんのところに行くの…帰ってきたら遊ぼうね」声を潜めた
「うん…いつ帰って来るの…?」「二回か三回…寝たら帰って来るって…」
私はそうか…と納得して…バイバイと声を潜めて手を振ると、
K子ちゃんも口に指を立ててバイバイと手を振った
母に纏わりつきながらその話をしてると
事の顛末を聞いてた母は、私視線まで腰をかがめると
「わかった…わかったから…誰にも言わないのよ、おばあちゃん家に行くとかそお言う事…」と言った
私は頷くと誰にも言わなかった
二回寝ても、三回寝てもK子ちゃんは帰って来なかった
帰ると急いでK子ちゃんちに行って見たけど、窓は何処も閉まってもう誰もいなかった

その頃は引っ越しはさして珍しい事ではなく、「引越しすることになりました…」と挨拶しに来る人もいたが、
黙って消えてしまう人もいた…まだまだ戦後間もない不安定な頃だった
大好きだったK子ちゃん、小母さんはまた遊んでねって言ったけど…もう会う事なかった
リヤカーを見ると小父さんかなって振り返ったりしたけど…いつも違っていた
どうしたかな…どんな人生を送っただろうか…大人しくて優しいK子ちゃん
蓮華もシロツメ草もクローバーもたんぽぽもいっぱい咲いてたなあ~あの頃


                                 025.gif007.gif            
[PR]
by time2022 | 2014-05-28 05:00 | 日記

2017年 11年目の海辺暮らしとなりました       黄昏て70才 撮りためた写真でその時思った事、今思う事等を、書き綴っていきますブログ内の写真イラストの使用を禁じます


by time