或る友人だった女性の話

部屋の中に広げた片付け物の中に、有吉佐和子の“悪女について”と言う単行本を見つけた。あの頃、センセーショナルなストーリーでテレビ化もされた
人間てこんな風に人生を作って生きていけるものか自分達の中でけっこう話題になった
重ね合わせるように一人の友人が浮かんでくる
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とある処で出会ったE子
学校は違うが、同じ学生という事で仲良くなった
あまり、見た事の無いタイプだった。
150センチに満たないころっとした体系で……美人では無い…影ではあまり名誉ではないあだ名で呼ばれていた。
しかし、知ってか知らずか、毅然とし臆する事は何も無かったように思えた
…と言うよりギロッと睨む細い目は人の口を閉じさせるに充分な迫力があった。
E子の場合‘美人ではない’と言うとこにかなりのインパクトがあった。
射抜くように低い声で話すのが印象的だった。

ゴーリキや哲学書などの本を抱え持って、喫茶店の隅で何かを何時も読んでいた。
それがポーズだったか本物だったかは後で考えさせられる事になる

知り合ってみると、かなり皮肉屋のE子の話は結構、的を得ていて可笑しかった。思想、宗教など何時も難しそうな本を抱えていたE子をまるで違う世界を見るようだった

E子の家は貧しく大学にいける環境ではなかったが、アルバイトでお金を溜めて浪人をして大学の夜間部に入ったと私に話していた。
深夜飲食店の皿洗いの手伝いをして学費、生活費へと当てていた。
昼は掃除の派遣会社に所属し、大使館やビルの掃除や、草むしりのアルバイトに行ったりしてた。
生活はかなり困窮をしていたと思う。

それなのに、青山に住んでいた。
これが彼女を語らせる大きなキーワードとなる
確かに場所は青山だが部屋はかなり変わっていた
出入りは窓しかない。
庭を回りこんで窓から入る、部屋は3畳に満たないような変形。
奥に唐紙の戸口が付いていて、開けると廊下の先にトイレがあった。
その先は大家の私宅になるので勿論其処まで静かに歩いて用を足し静かに帰ってくる
そお言う事である。
彼女はその手洗いの水を電気ポットに入れてお湯を沸かしてお茶を飲んでいた
ちょっと郊外に行けばもうちょっとましな部屋が借りれたと思うが、あくまでも青山という地名に拘っていた
彼女は地方で生まれ、それをひどく嫌っていた田舎生まれである自分を嫌い貧乏を嫌っていた。しかし真摯ではなかった。かなり攻撃的に自分の人生を切り開いていった。

日常的にまるで接点の無いE子とそう頻繁に会うことは無かったが、
久しぶりに会ったりして「まだ飲食店で働いてるの?」と、 聞いたりすると、
シッ!と指を口に立て「働いてる話を絶対しないで!」
それはお願いの態度ではなくて威圧的に嫌な態度し、
「大学の夜間部は…」と話題にすると、1部(昼間)も2部(夜間)も一緒なのだから言わないでと怒った。
あら?…そんな事気にするの?もっと超越した人かと思っていた
何か彼女の違う面を見たような感じがした。

そしてただのアルバイトだった筈なのに、飲食店の奥さんを「伯母様なの、遠い親戚…」と人に話してるのを聞いた。
何時の間にか私に話をする時も‘遠い親戚の伯母様’になっていた。
‘遠い’と言うとこに彼女の後ろめたさが有ったのかも知れない
そんな彼女の演じる虚栄にもちょっと嫌気がさしたりもしたが、
その後も付かず離れずの友人である事に変わりは無かった。

30歳を超えた頃彼女は結婚をした。
どんな事情かは…ちょっと差し控えるが、
かなりあざとい結婚であった事に間違いはない
すったもんだの結婚であった
夫と為る人には住むマンションがすでにあったが、
住む場所に拘りを持つ彼女は一年ほどすると
強引に高級住宅地の東京でも一等地のマンションに買い替え、移り住んだ
E子はその地名に執拗に拘った。独身時代青山に拘ったように…

吃驚したのは…その後の彼女の変貌した悪妻振りであった
獲物を狙い、入り込み、本性が現れだした…
彼女にとって、舞台は整った…そんな風に見えた
家事は一切せず、まるで下宿屋のようであった
食事も「お腹が空いた人が銘々、作ればいいのよ…」とのたまい、
食事、家事費は地元の高級ジム通いに継ぎこみ、セレブな雰囲気に酔っているようであった
あまり家を顧みなくなっていった
寝室は別で、夫君はあまり部屋から出てくることは無かったように思う
そして夫君は外出の多い妻より親元に居る事の方が多くなって行ったらしい
人格も装いも身のこなしも別人のように彼女は変って行った

彼女がこんなにセレブ嗜好の強い人だったのかと唖然とすることが多かった
喫茶店の片隅でゴーリキを読んでいたあの姿はいったい何んだったんだろう?

会うとE子は良く懐かしげに思い出話をした
「ほら、青山に住んでた頃…」確かに住んでた…
「大使館でアルバイトをしてた時…」確かに何回か掃除で行った事聞いた…
しかし、E子の記憶違いか私の記憶違いか思い出内容はかなり違うものだった。
青山の部屋は親戚の家への下宿に変わり、大使館のアルバイトは英語のお勉強に変わっていた。
えーそうだった?と言う私に‘そうよ’平然と言ってのけた
言うなて駄目押しをしたのかも知れない
なーる程、そお言う事!
あながち嘘ではない訳で…
マネーロンダリングだ!E子は過去を洗浄したんだ!結婚をすると共にE子の過去が華麗に変わった
まだ若かった私はE子の野心を軽蔑し、最も俗人であった事に落胆して会う事も無くなった

しかし、今思えばそれはE子の夢見た、欲しくて堪らなかった物を、這いずり、泥だらけになって手に入れた人生だったのかも知れない
自分の人生を作り上げた名プロディューサーだったのかも知れない…。


“成り上がり者です”って たかの友梨がデビィ夫人に挨拶をしたら
“成功者とおっしゃい”と言われたそうだ 印象的な話だね…       


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Commented by ikimeyamo at 2013-10-12 07:14
おはようございます
わたしはその彼女のような一面を
ほんの少し欲しかったです
Commented by time2022 at 2013-10-12 11:34
★ikimeyamoさん
長々読んで戴いて有難うございます…(•‾⌣‾•)و ̑̑♡
人それぞれ感じ方は違うと思いますが、人生黄昏てくると物の見方も穏やかになり、いろいろな価値観で人間て生きていくんだなと思うこの頃です。海辺の町は、今日良い天気ですよ 片付けの真っ最中です
Commented by みかん at 2013-10-12 12:06 x
今日も相変わらず暑くて今日は何日?なんて考えてしまいます。
その方美人でしたら第2のデビィ夫人にも成れたかもね?
Commented by ねこじゃらし at 2013-10-12 12:08 x
timeさんの文章、素晴らしいですね!
私は小説の一部を書き出したのかと思いましたよ!
timeさんのイラストも写真も文章も素人とは思えませんね。
なんか感動しました(*♥ω♥*)
自分の欲望を丸出して、人をなぎ倒して生きてる方いますね。
私には才能もないけど勇気もない小さい小さい人間だけど
周りに害は振り撒いてないと思う。(笑)
見栄の塊で生きていると疲れるでしょうにね。
Commented by time2022 at 2013-10-12 17:42
★みかんさん
そちらは今日も暑いですか?その分秋が長くなるといいんですが…
すぐに冬がやって来るんじゃないかと思いやられます
長い文章をお付き合いいただいて有難うございました… (_ _✿)
片づけをしながら、友人だった彼女を思い出しました
Commented by time2022 at 2013-10-12 17:55
★ねこじゃらしさん
若い私には見えませんでしたが、多分ギリギリのところで生きていたんだと思います、
何が何でも抜け出したかったのかも知れません
私も小心者でとても真似できる生き方ではありませんが
人それぞれですね~今幸せにしてるかなʅ(。◔‸◔。)ʃ…
Commented by otomeurarafuku at 2013-10-12 18:37
こんばんは~♪
なんか…小説を読んでいるみたいでした
嘘を重ねているうちに その人にとっては 本当のことのように思えてきたのでしょうか…

嘘を言う人 裏表のある人… お付き合いするの疲れますね…

Commented by ginnnnann at 2013-10-12 21:47 x
初めまして。
突然のコメントをお許しください。
興味深く読ませて頂きました。   世の中には色んな人がいるものだ、と改めて感じましたね。
お話の中の彼女、若い頃なら有りそうな話ですけれど後半、ますますその傾向に拍車がかかるのは、チト、怖い。

自分の思うように自分史を作り変える為に、周りに細波や大波を巻き起こしたのではないかしら? 
もしかしたら、自分自身が一番疲れているのかもしれませんね、判らないけど・・・・・。

Commented by time2022 at 2013-10-12 22:34
★otomeurarafukuさん
“悪女について”と言う本を手にしたら彼女を思い出しました
書きだしたら長い文章になりました…(✿→艸←)
いろいろな価値観で人間は生きていくものだと思います
こんな事してるんですもの片づけが進む訳がありません…(o◔艸◔o)
Commented by time2022 at 2013-10-12 22:51
★ginnnannさん
コメントありがとうございます 
長々と読んで戴いて有難うございます…ლ(╹◡╹ლ).。.:✽
いろいろな人生があるものだと思います
いいも、悪いも、印象的な友人でした
又よろしくお願いします…(•‾⌣‾•)و ̑̑♡
Commented by nagotu3819 at 2013-10-13 09:09
みやびさん、おはようございます。
十分に読み物としての作品ですね。面白く読ませて頂きました。
初めの人物像の描写で、E子さんを想像できたから、その経過がさらに理解できて…。
素晴らしい表現力ですね。
真似して書きたいけれど、足元にも及ばないような素晴らしさを感じとりました。
それにしても特異なE子さんですね。
ざらに居るような人ではないですよね。
普通に思える人でも小説の主人公にもなりえるのかな~という気もしてきましたが、やはり表現力です。
マーガレットミッチェルみたいに、たった一遍でも凄い作品…みやびさんのこの度のものを読んだら、小説をお書きになったら良いのに…と、思いました。
女の一生ものを、知りあった色々のことを土台になさって、小説をお書きになって…。期待します。
Commented by winedelunch at 2013-10-13 09:29
おはようございます。

私もなんだか引き込まれるように拝読させて頂きました。
こんなヒト、いました。
時々哀れにさえ思うこともありますが、ある友人からは「それは上から目線よ、あなたは幸せなのよ」と指摘されたことがあります。
こんなにも虚勢をはって生きていることはある意味才能があるのかもしれないな、と思ったり・・・
しかしながら、timeさんの文章に惹かれます。
Commented by 子鳥 at 2013-10-13 10:06 x
突然すみません。
みかんさんの所からお邪魔しました。
悪女について、は、私もはまりまして、昔、劇団四季の女優の影まりえさんが、富小路公子役でした。少し前は、沢尻エリカさんだった気がします。

思わず引き込まれて読みました。
まるで小説みたいでした。
また、よらせていただきます。よろしくお願いいたします。
Commented by time2022 at 2013-10-14 00:08
★そよぎさん
長々読んで戴いて有難うございました
片づけをしてる最中で、閃いてこんな長い文章になってしまいました
過ぎてみれば何でも懐かしいですね…ლ╹◡╹ლ
“風と共に去りぬ”は映画で何回も見てます…大作ですよね
Commented by time2022 at 2013-10-14 00:24
★winedelunchさん
いろいろな価値観があるものだと思います
描く夢はそれぞれ違いますね…本当にいろいろですね☝(๑’ᴗ’๑)
winedelunchさんのブログも毎回お訊ねさせていただいてます
素敵なお写真拝見しに…インテリア雑誌のプロ写真のようですね
Commented by time2022 at 2013-10-14 00:40
★子鳥さん
お尋ねいただいて有難うございます
みかんさんのところからいらして頂いたんですか?
“悪女について”影まりえさん主演の連載ずっと見ました
何か衝撃的な内容でしたよね…థ౪థ
私もお尋ねさせていただきますね よろしくお願いします…。◠‿◠。✿
Commented by shima_shima1225 at 2013-10-14 07:50
おはようございます!
timeさんの文章力にびっくり!
朝から惹きこまれるように読んでしまいました。
いろんな人がいるのですね、、、
どういう人生を歩むかは自分で決めることですが
彼女はそういう人生を欲したわけですね。。
十人十色、、すごいわ~^^;
Commented by time2022 at 2013-10-14 11:57
★shimaさん
恐れ入ります…ლ→ܫ←ლ~♥
片づけで忙しい時に、思いついてこんな長文のブログ書きました
読んで下さる方も大変だと思いながら書いてしまいました
これからも、こんな狂った事もあると思いますが
見捨てずお付き合いください…(๑´ლ`๑)フフ♡
by time2022 | 2013-10-12 05:24 | 日記 | Comments(18)

2017年 11年目の海辺暮らしとなりました       黄昏て70才 撮りためた写真でその時思った事、今思う事等を、書き綴っていきますブログ内の写真イラストの使用を禁じます


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